「勉強は量か、質か。」
この話になると、特に教育業界では、
「勉強なんて、とにかく量だ。」「質なんて、量をやり切った人間だけが語れる。」
という意見をよく聞きます。
もちろん、その考えにも一理あります。
でも、僕はこう考えています。
勉強なんて、できるだけやらずに済むように考えろ。
勘違いしないでほしいのは、「勉強するな」という意味ではありません。でも勉強時間を増やすことを目標にすることは理想とは言えないと思っています。
例えば、僕が生徒に
「昨日の勉強どうだった?」
と聞くと、「6時間やりました!」
と答える子がいたとしましう。
もちろん頑張ったのでしょう。
でも、僕が本当に聞きたいのはそこではありません。
ある子はこう答えました。
「昨日は二次方程式をやりました。計算問題はほぼマスターしました。ただ、文章題、特に速さの問題はまだ苦手なので、今日はそこをやろうと思います。」
さらに、
「何時間ぐらい勉強したの?」
と聞くと、
「えっと……図書館に1時ぐらいに行って5時過ぎに出て、寝る前にも単語を見たから……6時間ぐらいなんですかね?」
意外と勉強時間を覚えていません。でも、僕はこういう子ほど伸びると思っています。
なぜなら、この子の頭の中にあるのは時間ではなく、学習内容だからです。
逆に、なかなか成績が伸びない子ほど、
「昨日は11時間勉強しました!」
と言います。でも話を聞いてみると、
机の上にはスマホ。通知が来るたびに気になってしまう。
集中している時間はそれほど長くない。
それでも、「11時間」という数字には満足してしまう。
当たり前ですが、勉強で大切なのは、どれだけ勉強したかではなく、何ができるようになったか。
勉強時間は努力の指標にはなります。でも、成長の指標ではありません。
では、勉強の質とは何でしょうか。
僕は、一言で言えば、
独学力だと思っています。
分からない問題があったら、自分で考える。
読解力、論理力、振り返る力、自分の目標と現在地を比較して逆算する力。
そうした力をまとめて、僕は独学力と呼んでいます。
それに高校生は他にも大事なことはたくさんあるわけです。
「とにかく長時間勉強しろ。」
とは言いたくありません。
部活もある。
恋愛もある。
アルバイトもある。
趣味もある。
高校生は、多感な時期です。
勉強だけに青春を使う必要はありません。
だからこそ、だらだら3時間勉強するくらいなら、集中して1時間やった方が、遥かに価値があります。
それでもいい大学に行ってみたいってなっても、質が高まったのならば可能性はかなり上がります。
そして面白いことに、独学力が身についてくると、勉強時間は自然と増えていきます。
なぜなら、自分で
「ここを復習したらもっと伸びそうだ。」
「あと30分やれば、この単元は完成しそうだ。」
ということが分かるようになるからです。
だから誰かに「もっと勉強しなさい」と言われなくても、自分から机に向かうようになります。
さらに、独学力がある人は、何かをきっかけに爆発的に伸びることがあります。
学校説明会へ行って、
「この学校にどうしても行きたい。」
と思った。
医者という仕事に憧れた。海外で働いてみたいと思った。
そういう偶然に近いきっかけがあったとき、自分で必要なことを調べ、自分で勉強を始められる。
だから一気に伸びるのです。
逆に、独学力がない人は、目標ができても何から始めればいいのか分かりません。
結局、誰かに言われるまで動けない。この差は、社会に出るともっと大きくなります。
社会では、誰も宿題なんて出してくれません。
「台湾に興味が出てきたから、中国語を勉強してみよう。」
「AIが仕事で必要になりそうだから、使い方を覚えよう。」
誰にも管理されることなく、自分で必要だと思ったスキルを身につけていく。
しかも、必要とされるスキルは時代とともに変わります。
少し前までは、
「英語ができれば強い。」
「プログラミングができれば食べていける。」
と言われていました。でも、リアルタイム翻訳や生成AIの進歩を見ると、それすら将来どうなるか分かりません。
だからこそ、大切なのは特定の知識を身につけることではありません。
必要になったときに、自分で学び始められる力。
僕は、その独学力こそが、受験勉強で身につけるべき一番の財産だと思っています。
だから僕は、生徒に勉強時間ではなく、
「昨日より何ができるようになった?」
と聞きたい。
勉強時間を目標にするのではなく、独学力を育てることを目標にしてほしい。
その結果として増えた勉強時間には価値があります。
でも、勉強時間そのものを目標にする必要はありません。
受験勉強で本当に身につけるべきなのは、知識ではなく、自分で学び続けられる力です。
それが、僕の考える学力です。


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