最近、「老後には◯千万円必要」という話をよく見かけます。
物価高。
年金不安。
医療費。
介護。
確かに、お金がない老後は不安です。だから多くの人は、一生懸命お金を貯めます。
実際、日本では年齢が上がるにつれて、年収は下がっていく一方で、貯蓄額は増えていく人が多いと言われています。

つまり、多くの人は、
「元気に動ける時代」にお金を使わず、
「自由に動きづらくなった時代」にお金を残している。
そんな構造になっているのです。もちろん、老後資金は大切です。
極端に若いうちに使いすぎてしまえば、当然、老後に生活が破綻してしまう可能性もあります。
だから僕は、「老後資金なんて考えなくていい」と言いたいわけではありません。
ただ最近は、
「老後には◯千万円必要」
という話ばかりが強調されすぎているようにも感じます。だからこそ、バランスを取る意味で、あえてこう言いたいのです。
「使えるうちに使え」と。
僕の父は現在70代です。
元々釣りが好きで、昔から「定年したら全国をゆっくり回りたい」と話していました。しかし、定年後まもなく足を悪くしてしまい、長距離を歩くことが難しくなりました。もちろん今でも出かけることはあります。でも、若い頃に思い描いていたような、「自由に全国を旅する老後」は難しくなってしまいました。
その姿を見て、僕は強く思うようになりました。
歩ける。
食べられる。
旅行できる。
新しいことに挑戦できる。
そういう時間には、期限があります。そして、その期限は「思っているより早い」。
だからこそ、老後資金を貯めることだけでなく、
「元気なうちに人生へ投資する」
という視点も大切なのではないでしょうか。
もちろん、「長生きしてお金が足りなくなったら不安だ」という考えもあります。
そういう方のために、終身年金のような仕組みも存在します。僕自身は、手数料や自由度の観点から、必ずしも積極的に好きな商品ではありません。
しかし、
「長生きリスクへの保険」
として考えれば、合理性がある場面もあります。
つまり大切なのは「とにかく貯めろ」
でも「全部使ってしまえ」
でもなく、
“自分が何に価値を感じるか”なのだと思います。
旅行。
趣味。
学び。
挑戦。
子どもや孫と過ごす時間。
そういう「今しかできないこと」にお金を使える人でありたいと、僕は思っています。もっと言えば僕自身は死ぬ一ヶ月ぐらい前までは働いていたいですね。
そして、「自分では使いきれないから、子どもに相続として残したい」と考える方も多いでしょう。
もちろん、それ自体は悪いことではありません。僕自身、子どもや家族を思う気持ちはとても大切だと思っています。
しかし、ここにも少し考えたい点があります。
例えば、平均寿命近くまで生きたとします。
すると、その頃には自分の子どもも60代前後になっていることが多いでしょう。
つまり、子育てもある程度終わり、住宅ローンも落ち着き、生活費が下がり始める時期です。
もちろん、お金が不要になるわけではありません。
しかし、本当にお金の価値が高い時期というのは、もっと若い頃ではないでしょうか。
例えば、
- 子どもの教育費
- 大学進学
- 留学
- 起業
- 引っ越し
- 新しい挑戦
こうした「人生を大きく動かす時期」にこそ、お金の価値は大きくなります。
だから僕は、
「相続として最後に残す」だけでなく、「元気なうちに渡す」
という考え方も、もっと広がっていいと思っています。
実際、日本の相続税には、
3000万円 + 600万円✖️法定相続人の数
という基礎控除があります。
そのため、相続税が発生するのは全体の1割程度とも言われています。一方で、生前に財産を移そうとすると、今度は贈与税の問題が出てきます。
年間110万円までの贈与は非課税ですが、現在は段階的に、相続開始前7年以内の贈与について相続財産へ加算される方向へ制度改正が行われています。
しかし例外もあります。
例えば、孫の大学費用や生活費などを、必要なタイミングで都度支払う場合、通常必要な教育費の範囲であれば、原則として贈与税の対象にはなりません。
つまり、
「若い世代が挑戦できる時期に、お金を使う」
ということは、税制の面から見ても、ある程度合理的な考え方なのです。
また、孫世代にとっても、
「何に使われたかわからない相続」
より、
- 学費
- 留学費用
- 一人暮らしの初期費用
- 資格取得
- 新しい挑戦
のように、“人生を前に進めるためのお金”として渡されるほうが、価値を実感しやすいのではないでしょうか。
実際、大学進学や専門学校、資格取得などは、「お金がないから諦める」ということも少なくありません。
だからこそ、
「亡くなった後にまとめて残す」
だけでなく、
「挑戦が必要なタイミングで支える」
というお金の使い方には、大きな意味があると僕は思っています。
もちろん、相続として財産を残すこと自体が悪いわけではありません。
ただ、人生の価値というのは、「いくら残したか」だけではなく、
「誰かが挑戦できる時間を作れたか」
にもあるのではないでしょうか。
だからこそ、60代というのは、
“お金を貯め切る時期”ではなく、
「元気なうちに人生へ投資する最後の時期」
なのではないかと、僕は思っています。
お金と教育の相談室シード 代表 加藤祐太


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